巨大独占 NTTの宿罪 / 町田徹 著

NTTを取り巻く時代の状況と、その時のNTTのトップや政治家の人物像がわかって面白い。歴史的史料価値があると思われる。

巨大独占 NTTの宿罪

巨大独占 NTTの宿罪

元々は、7月6日の郵政民営化法案 衆院通過というエントリに寄せられたコメントがきっかけで読み始めた。結構、内容が盛りだくさんで読み終わったのが今日になってしまった。

著者は日本経済新聞の記者時代にNTT分割論議を追っていたようで、その時の経験がこの本に生かされている。「NTTの宿罪」というタイトルからもわかるとおり、著者はNTTに批判的だ。批判部分の妥当性についてはちょっとわからないが、NTTという組織の構造が変わる時のトップの人間像が描かれていて面白い。

一番驚いたのが、著者は持ち株会社を廃止して、徹底的な分割を推し進めるべき、という論者なのかと思ったら、「エピローグ」という章で、NTT東西会社の再国有化「も」有効な手段であると述べている。その心はインフラ部分は公共財として一般に開放するべし、という考え方だ。この意見には、自分もある程度賛成する。NTTという会社はインフラとサービスが一体となっている会社である。このことが、問題をややこしくしているような気がする。

最近、NTTは通信業界が構造変化(固定電話からインターネット)しており、NTTの財政状況が厳しいと言っている。これは、独占企業で無いように総務省に思わせ、NTTの再再編を狙っているのではないか、と著者が指摘している。確かに、NTTのサービス統合の動きは一部で始まっているようだ。

さてさて、真相はどうなのでしょうか。
最後に、この著者が第6章の「郵政省vsNTT 死闘の果てに」で書いてあった、ある一説を引用してこのレビューの締めくくりとしたい。

誤解を恐れずに言えば、NTTの巨大な政治力を侮ってはいけないということだ。NTTが納得しない改革を、政治の判断で実行して貰おうなどど考えても、そんなものはいくらでも押し返されてしまうのである。巨大独占企業とはそういう力を持っているのである。

この引用部分がどういう文脈で言われたかを知りたくなった人は是非この本を読んでくださいまし。