パフォーマンス・マネジメント - 問題解決のための行動分析学 - / 島宗 理 著

パフォーマンス・マネジメントとは、自分のやる気をどう出すか、相手のやる気をどう引き出すかを分析し、改善の方向性を見つける学問である。
能力の有無や素質の有無とは関係なく、誰にでもやる気を出すことが出来るということをこの本は教えてくれる。面白い一冊です。

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

本書の構成は実に分かりやすい。前提条件(A)と行動(B)と結果(C)の3つをセットにして分析するABC分析を紹介し、それを仕事、恋愛、しつけ、学校、はたまたプログラムのコーディング規約に至るまで色々な場面に適応する。本自体は架空の人物*1の対話形式という方法で進んでいく。
行動分析学が専門で心理学を教えている平野が、ある企業の係長の上澄に行動分析学を教えるという形で対話は進んでいく。9つの行動の原理や難しい言葉なども出てくるが、きちんと定義を強調してから先へ進むので非常に読みやすい。
本書が陥りやすい箇所として警告しているのは「個人攻撃の罠」である。「あいつは本気になってないから」とか「あいつは性格的に向いていないから」など、個人の素質や、やる気そのものを物事が出来ない言い訳の材料にしてしまうことである。しかし、相手の本気さや性格などは、周りの環境によってコントロールできることを本書は教えてくれる。
本書は、パフォーマンス・マネジメントに唯一の正解は無いが、それがために勘や思い込みではなく、客観的なデータによってマネジメントするべきであると書いてある。この意見には全く同意だ。
上司が「お前ら頑張れ、超頑張れ」と部下を根拠も無く叱咤激励することが如何にむなしいか、そういう問題意識がある人は是非この本を読むべきでしょう。

*1:モデルはいると推測されるが