出井伸之「迷いと決断 ソニーと格闘した10年の記録」
- 作者: 出井伸之
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/14
- メディア: 新書
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ソニーを取り巻く色々な事例とそれに対する出井さんの意思決定のプロセスの思考が書かれています。ま、全編、出井さんの言い分なので、社員の人からは反論もあるんでしょうが。。。
テレビや映像を取り巻く環境が今後激変していくであろうことを、1993年頃に感じ取っていており、東京MXTVの出資に反対していたと書かれています。この辺りの議論に、今のYouTubeのブームが加わるとどうなるのだろうか、と思うと、YouTubeのことが書かれていないのが残念です。時期的な問題なのだと思いますけどね。
あと、出井さんはQUOLIAをやめて欲しくなかった、とあります。トヨタのレクサスのように、ソニーを象徴するトップブランドの構築を重要視していたようです。個人的には、それならばQUOLIAという新しいブランドではなく、すでにあるロボットQLIOを軸に据えて展開するべきだったように思います。
もう一つ言うと、この本はQLIOについて全く触れられていないのも不満です。出井さんの中ではその程度のプロダクトだったということでしょうか。ソニーがQLIOをやめてしまったことは、日本全体のロボット業界にとっても、ソニーにとっても大きな損失であったと感じます。
話がそれましたが、出井さんは経営は技術であると言い切ってます。その辺りをちょっと引用しましょう。
「経営という技術」が、日本では認知されていないと感じます。経営学という学問はあるけれど、これを実践するのは技術なのです。
技術ですから、経営しようとする事業がどんな分野でも適用できます。よくエンジニアが、経営陣を批判するときに使う、「あいつはテクノロジーがわからないから経営なんてできるはずがない」というセリフは的外れです。たとえばGEは、電機、素材、金融、メディアなど広範囲な事業を手がけるコングロマリットですが、前CEOのジャック・ウェルチ氏は、エンジンの作り方やプラスチックの作り方をおそらく知らないはずです。それでも、経営という技術を知ってさえいれば、世界最大の企業を育て上げることができるのです。
この言い分に反感を感じるエンジニアの人もいるかもしれませんね。ま、ボクもその一人だったりします。
技術の詳細は知らなくて良いけれども、どの技術が今後伸びそうか、という目利きは経営者に必要な技術だと思うんですけど、この文章はそこまで否定しているのでしょうか。ちょっと、わかりませんけど。
ただ、そう受け取ってしまいかねない文章である危険性は、はらんでいると思います。
全体を通じて、やはり経営のプロですから企業を評価する指標の話が随所に出てきます。指標というのは恐ろしいもので、その根底に流れる思想を意識しないで使うとトンでもない結論になってしまうことがあります。おそらく、出井さんはそれを理解していたと思いますが、周りがそれを理解していたかどうかは気になるところです。
確か、最近、ソニーを退職したエンジニアが書いていた暴露本があったような、、、それもあわせて読みたいですね。
追記:↓の本ですね。
技術空洞 Lost Technical Capabilities (光文社ペーパーバックス)
- 作者: 宮崎琢磨
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/04/21
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