時代遅れのGeekにならないために
新しいツールに適応する努力を怠ってはならない。
今更ながら切込隊長の「けなす技術」を読んだのだが、この本にはニフティサーブにハマり過ぎたためにインターネットに順応できずに消えて行った人の話が載っている。
自分が常々考えている危惧と同じことが書いてあった。
私は最近、9年程度使っていたWindowsを捨てMacOSXに移行したが、自分の知らないものがそこにあり、それに熱狂している人たちがいるのを見て、これは一度体験しておく必要があると思った。今までは移行のためのコストも高かったが、自分が利用するメールやブックマークといったサービスをネットの「あちら側」に置くことによって移行のコストも格段に下がった。この前、Windows Vistaが出たが、このタイミングでMacOSXに移行し体験しておくのは悪くないと思ったのである。一旦、MacOSXを使ってみると、世の中で語られているMacの魅力以上に良いことがわかってきた*1。
話はちょっと変わるが、井上陽水は酒が飲めない人間だったが、お酒に熱狂している人たちがいるのを見て、40歳過ぎて吐きながら酒を飲んでいたそうである。と、昨日J-WAVEのロハストークで言っていた。
これは極端な例だが、ある物を「良い」と言っている人たちがいて、自分がその世界を知らない場合、その世界を体験し理解する努力をするのは無駄なことではなかろう。
私の身の周りにも、自作の日記スクリプトが使いやすく愛着がある、という理由でブログに移行せず、コメント欄もなくシンプルなHTMLで日記を書き続けている友人を知っている。彼は学生時代、自分よりも凄い技術を身につけており、フリーソフト界でもそれなりに有名であるにも関わらず、彼のホームページはblogに移行せずコメントをもらえないというのは損していると感じる。
私の場末のblogでさえも、本の批評を書いたら著者からコメントが来たり、衆議院議員の人からコメントがついたりする。ま、コメントをつけた人が本当に本人か、という問題はあるのだが、こういうことはblogでなかったら味わうことの出来ない感覚だ。
こういう変化はblogだけではなく、(あえて限定するが)PCを巡るあらゆる場面で起こっている。このエントリは、かつては変換がヘボいIMEの代名詞だった「ことえり」で書いているし*2、チュートリアルを書くにしても今ではデスクトップの動画をYouTubeに置いてblogでアップする時代だ。もはや、シコシコHTMLを書いてAnother HTML-lintで100点かどうかチェックしながらFTPでおそるおそるアップする時代ではないのである。
インターネット、そしてWeb2.0の世界に突入し、色々なライブラリやWebAPIが使えるようになってきてから、プログラミングの方法論も変わってきた。私も、C++で美しいクラス構造を追求しながら本質ではない部分のデバッグに時間を費やして作ったプログラムを公開していた時期があった。こういう方法論で作るプログラムも未だあるとは思うが、それが唯一の選択肢ではなくなっていることに注意すべきだ。自分のやろうとしていることが、もっと簡単な方法で出来ないか、一度考えてみるべきである*3。
古くは草の根BBSからニフティサーブへ、MS-DOSからWindowsへ、CからC++、C#へ、そしてawk、sedからPerl、Ruby、PHPへ、時代が変わる毎に使われる技術もゆっくりと変化している。過去、blogは日記システムと何も変わらないと批判されてきた時代もあった。「私が使い慣れたレガシーなシステムでもそれと同じことができる」と威張らずに、まずは一度新しいツールに適応する努力をしてみてはどうだろうか。
- 作者: 山本一郎
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