TGMの魅力

昨日の日記で予告した通り、テトリス最新作であるTGM(Tetris Grand Master)シリーズの魅力について語ってみたいと思います。
大体の人が知っている通りテトリスとは4つの小さいブロックから成るテトラミノと呼ばれるブロックを積んで行き、1列そろえると消えるというゲームです。直線のテトラミノを使うことによって最大4列同時に消すことが出来、この4列消す行為をテトリスと言います。我慢してブロックを積み、直線のテトラミノで一気に4列を消してカタルシスを得るというのが、このゲームの本質かと思います。日本では1988年頃に大ヒットしました。素材としては約16年前のゲームで、ゲームの歴史の中ではもはや古典と呼ばれる分野に入ると思います。
TGMもテトリスをベースにしているという点で、その基本は変わりません。また、テトリスは素材としても十分味わい尽くされた感があります。しかし、20Gと呼ばれる落下速度が極端に早いモードが追加されたことによって、ユーザがブロックを積む戦略というのが大きく変化しました。TGMのメーカであるアリカのサイトで見られる動画によってそれを説明したいと思います。

動画URLは↓です。
http://www.arika.co.jp/movie.htm

GMとはGrand Masterの略で、ゲーム中最も高いランクの名前です。TGM1の場合、ゲーム中のスコアとレベル1000を達成するのにかかった時間で評価されるようで、大体13分30秒を切るとGMランクが獲得できると言われています。この動画はその中でもクリアタイムが9分19秒という非常に早いタイムのものです。
このムービではレベル300位までは今までのテトリス同様、隙間がなくそつのない積み方をしています。ギリギリまでテトリスを行なっていないのは、ブロックを下まで落とす時間も惜しいからであって、GMランクを狙う人には重要なテクニックになっています。しかし、これはいきなりブロックを落とすシステムがないTGM1特有のテクニックだといえるでしょう。
レベル300を超えるとブロックを積む戦略が大きく変化します。ブロックが落ちるスピードが速くなり、空中のブロック移動が制限されるため、今までの戦略が通用しないのです。また、BGMが変わったレベル500からの20Gと呼ばれるモードでは、「空中」という概念が無くブロックはいきなり地面に接した状態から操作出来る様になります。では、どうするか?
それは、最初に真ん中(特に左から5ブロック目)を高く積んで、その後のブロックはスライドさせて穴を埋めるという戦略を取るのです。ちょうど山の山頂を真ん中に作って、他のブロックは山の斜面を徐々に降ろすような感じで積んでいくのです。その戦略下では、あるブロックの積み方の最善手が変わってくるため、旧来のテトリスとは違ったゲーム性を生み出すことに成功しています。
20Gモードではブロックの移動が大きく制限されるため、全てのブロックで隙間の無い積み方が出来ることはまれです。そのため、俗に「回転入れ」とか「ずらし入れ」と呼ばれる、上から落とすだけではなく横からスライドさせてブロックを入れるテクニックが重要になってきます。この点のサポートがTGMは充実していて「自動補正」と呼ばれ、隙間に入れやすい回転法則になっています。
下に落としてからスライドさせるという方法論は1988年頃にセガがアーケードで発売したテトリス(通称セガテト)で既に実現されていたのですが、その方法論を究極まで推し進めたのがTGMであると言えるでしょう。
このムービーの見所をちょっとだけ付け加えると、レベル541の時に落ちてきた赤ブロックです。これはただスライドさせるだけでは右端に入らないところを巧妙な回転で一番右端に持っていってます。これを一瞬のうちにやるというのが、TGMファンタジスタの「技」の妙といえるでしょう。でも、ファンタジスタの間では、この操作は既に定石のレベルに落ちているみたいですけどね・・・

やはり、このムービーのインパクトが一番です。「こんなゲーム出来ね〜」と思考停止させるには十分なインパクトですが、ちょっと細かく見てみましょう。
DEATHモードとは、TGM2であるTetris Absolute Plus(以下TAP)で追加されたモードで、いきなり20Gモードから開始し、しかも地面に接してからブロックが固まる時間も徐々に短くなるという、人間の限界に挑戦するモードです。ほぼ同じ数のブロックを落としているにも関わらず、上のTGM GMムービーと比べ約半分になっていることから、このモードの速さが伺えるでしょう。
このレベルの動きが出来る人は日本でもおそらく20人はいないと思いますが、大きな特徴として最初は穴がぼこぼこ空いていて積みあがっているにも関わらず、そこからの復活が素晴らしいということです。回転入れやずらし入れを駆使して復活する様は、見ている方もカタルシスを得るには十分です。特にレベル273の赤では、地面のスライドに失敗し、その後の窮地ぶりは大変なことになっているのですが、レベル294からの赤で3列消してからの復活ぶりは目を見張るものがあります。
このムービーからはTGMとは「ミスをなくす」よりも「ミスをリカバーする」ことの重要性が高まっているといえるでしょう。自分もこのレベルの動きがいつか出来る様になりたいな・・・

TGM GMムービーよりも時間が短いのはTAPになって、徐々にではなくいきなり落とす操作(レバー上入れ)が加わったのが大きいです。TGMのGMムービーと比較して、回転入れの妙がそこかしこにあります。特にレベル800時にほとんどブロックが残っていないというのが驚愕でしょう。
あとは、クリア後のシャドウ スタッフロールのインパクトが最高でしょう。これは実際に見てもらった方が・・・そもそも、これに挑戦できるのが日本に何人いるのかは微妙ですが。

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今まで言ったようなことってのは、TGMをやっている人なら納得してくれると思うんですが、そういう側面が知られずに20Gモードのインパクトだけで敬遠されているのが、もったいない気がします。TGMは短時間に集中して、技の妙技を競うゲームなので非常にストイックであることは間違いないのですが、そこには普遍的なゲームの面白さへのヒントみたいなのが隠されている気がします。
最新作のTGM3(Ti)ではWORLDルールというモードが追加され、回転の融通が相当利くようになりました。製作者の追い求める「一瞬の判断」を競うゲーム性からは、ややかけ離れているかもしれませんが、初心者でもとっつき易くなっているので、見かけたらやってみてはどうでしょうか?

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システム的には
http://www.din.or.jp/~koryan/tetris/d-tgm0.htm
も参考になります。