成功体験

昨日、職場のとある人の就任パーティにでて、お話をして思ったことなんだけれども。
社長とか副社長のレベルで、技術出身か営業出身かで、その下で働いているものの不安度は大きく変わってくる。私なんか、研究職なので、「もう、あの研究所いら〜ん」って上の人が言ったら問答無用でリストラなわけである。R&Dを一種の長期的な投資とみなしてくれる人ならばいいが、ライブドアのように既に出来たものを外から買ってくればいい、というパラダイムシフトが企業内に起こった場合、研究所の立場は途端に危うくなる。
じゃあ、社長に技術出身(研究出身)な人がなってくれればいいか、というと話はそう単純ではないようだ。
松下幸之助の著書にもあるとおり経営とは特殊なスキルである。松下のような家電を売っているメーカーでさえ、トップが技術を詳しく知っている必要はない。というか、技術出身であっても、上の立場になってしてみれば、自分の専門以外のことはよくわからないのが普通である。
また、上司は技術の細かいレベルまで知っていて「しょうがないね」って同情するのが仕事ではなく、「そこをなんとかしろ」と尻を叩くのが仕事である。企業として利益最大化するのならば、そうなるのは当然の帰結であろう。
話を元に戻すと、社長に技術出身者がなった場合のことである。
過去(特にインターネット以前)、技術といえば一社で周辺技術の全てを囲い込んで製品にするのが普通だった。例えば、電話の交換機、ファクシミリなど、日本独自の方法で電電公社、または日本の周辺家電メーカとノウハウを共有し、全てを囲い込んで大企業にしか出来ない製品を出すことこそ成功に繋がったといえる。
しかし、インターネットで情報のやりとりにかかるコストが限りなくゼロに近づいて、状況は変わった。優れたオープンソースのソフトがあれば、業務であっても皆使う。その方が、製品のコストが安いからである。具体的には、LinuxApache Web Server、前述の電話であればskypeなどがそれに該当する。日本国内でいえば、車産業などの高度なハードウェア技術を必要とするものに関しては、まだ事情が異なると思われるが、少なくともソフトウェアで代替が利くものに関しては優れた技術のダウンサイジングは凄まじい勢いで進んでいる。梅田望夫氏のチープ革命が生む方向性などを参考にして頂ければと思う。
このように移り変わる技術戦争における戦略は昔と完全に変わっているのである。そんななか、技術出身の社長が出てきて、過去の技術戦略で成功した体験を自信の拠り所にし、今まで通りの戦略を取ったらどうなるだろうか?
答えはいわずもがな、であろう。技術を外から買う、オープンソースを重要な場面で利用する、コストダウンや技術の優位性があるならば、自社の技術は使わない、といった行動を果たして上の人間は許せるだろうか?許せないんじゃないかなぁ、と思う。
インターネットによる情報流通革命は技術戦争の戦略にも大きな変化をもたらした。自分が成功していないうちからこんなことを言うのもなんだが、過去と今は違うということを常に警戒しながら、思慮深く自分自身の成功体験によらない行動を取ることが重要なのではないだろうか。
参考:ハイパー歎異抄 序章